息長川ノート

 2008年から2009年にかけて「マチともの語り」サイトでの二作目として『息長川おきなががわノート』を執筆、完結させたていたが著者としては当作を未完扱いとしていた。それは舞台となる場所として大阪については書けることは書いたものの、滋賀(近江)について一部言及があるが書ききれていないように考えていたからだった。「マチともの語り」の運用が終わったあとも pressbooks という ebook 作成・公開ウェブサービスを使って、未完稿として読めるようにしてあった。

“pressbooks.com will no longer host books after September 29, 2022” というタイトルのメールが pressbooks の運用より送信されてきて内容確認したところ、利用者が能動的に移行作業を行わないと pressbooks の新サイトには反映されず、また新サービスにはサブスクリプションが設定されるとの案内らしいと分かってきた。私は『息長川ノート』を ePub 形式でダウンロードし pressbooks としての移行は行わない選択とした。そして改めて自稿を読み直した結果、現在の内容をもとに ebook として個人出版ないし出版社の支援サービスでもって刊行するよう方針を変えることにし2022年9月から作業に入っている。

 方針を変えた理由はふたつあって、ひとつはここ数年で椿井文書という偽文書群の存在について知ったという経緯があった。椿井文書が偽造した由緒書や系図などの資料については近江国もその範囲に含んおり、それらの影響を考えると「息長川」というテーマでより深く文献に当たるとすればそれは別著とすべきほどに主題が分かれてしまう。むしろ『息長川ノート』で書いた並河誠所による甚だ質の低い式内社についての記載と、椿井文書が生まれる素地となった背景とは共通した素地を持っておりそこについて補遺することで『息長川ノート』として書くテーマは完結できると判断したものだった。

 もうひとつの理由は、やはり未完状態で停滞していた『内川逍遥』について「電子雑誌トルタル」での連載を改稿して改めて公開し直すという判断を同時期にしたためである。なぜ『内川逍遥』について再公開にしたかということについてはいずれまた別の場所で書くかとおもうが、おおまかには2022年に自らの執筆について見直す契機が訪れサイトも新たに立ち上げるに至った、その対応の中の作業として『息長川ノート』の刊行作業もある、ということである。

 以上のようなことで2022年11月現在『息長川ノート』は校正作業を行なっている。当刊行作業においては今後の参考になるように「型」を決める作業としても行なっていて、校正については「iOS の Books による読み上げ機能+校正サービスの利用」という作業内容で進めている。小規模な執筆活動の参考になればよいと考えており実例を示しながらまとめられたらと考えている。それはどのような手順やサービスを使ったのかということだけでなく他者・他社に協力いただいた際の契約内容などについても「型」を示していきたいと考えている。